冬鍋雑記帳

ゲームを愛するゆかいな日々。冬にはスキー

映画『ゆるキャン△』への雑感 ~ゆるくない現実と社会、それでも伝えたいこと~

わたしをキャンプの道へと引きずり込んだアニメ「ゆるキャン△

その劇場版が、満を持して公開されました。さーっそく観てきたのですが・・・

さてはプラネテスだなオメー

というのが観た直後の率直な感想でした。でもそのあとでいろいろ考えてみたら、あるひとつの答えにたどり着いた気がしたので書きなぐっておきます。

まだ観てない人はブラウザバックして映画館に行ってきてね。

大人になったみんな

映画ではJKから社会人になって、みんながそれぞれの場所、それぞれの道を歩んでいます。地元、東京、横浜、名古屋・・・・うーん大人なんよなぁ・・・なかなか会えないのも仕方なし・・・。

でも開幕千明がしまりんと居酒屋で飲むシーン、これは大人じゃないとできないことですよね。「あーこれこれwこの夜の雑多な街並みと、とりあえず生中、これなんよなぁw」と思いましたね。タクシーで無理やり行動できるのも大人の経済力の賜物だな!それぞれクルルァも持ってるから移動も自由!

 

切り離せない現実、そして社会

が!!当然大人ですから、お仕事をするわけで・・・この「働く社会人」としての側面が強力すぎて、(特に真っ先に出勤して夜中まで職場にいるしまりん)観る者に「社会の現実」ってやつをありありと見せつけてきます。

しまりんだけでなく、配属先が廃校になるという「現実」と直面するあおいちゃん、土日は仕事が忙しくなる斎藤さん、キャンプ場計画が大人の事情で止められる千明・・・

あと斎藤さんに関しては、ちくわが老齢になっている描写も不安をアオリイカ。まじでちくわ退場はやめてくれやめてくれと念じながら観ていましたね。

以上のように、これは確かにゆるキャン△なんですが、「牧歌的なゆるゆるキャンプ場開発物語」ではなく、「確かにそこにある、時間の流れと現実を前面に押し出した社会人物語」なのです。これやばいだろ・・・私のようなうだつの上がらないサラリーマンは、胃の中に鉛を重ね置きさせるあの感覚をじわじわと味わうハメになります。お前(テーマが)重いんだよ!

幸いなことに、皆の上司&同僚は良き理解者であり有能な社会人であります。しまりんの職場の刈谷さんも編集長も、なでしこのお店の店長も、千明の上司も、皆の働きを認め、キャンプ場づくりを後押ししてくれるジェダイの大人です。これでキャンプ場づくりに否定的ないや~~~な大人(皆の職場にもいるかも!)なんて登場した暁には精神が破壊されてしまう。

大人って、何?

「大人でも、何でもできるわけじゃないんだね」

キャンプ場計画が頓挫しかけたとき、しまりんを温泉に誘ったなでしこのセリフですが、急に真理突くのやめてもろて。なんか一番なでしこが大人になってる気がしますね。彼女はきっとすべてを理解しているのでしょう。キャンプ場計画の頓挫という現実がどうしようもないことも、それを仕事として追いかけ続けてきたしまりんの気持ちも。だからこそ自然にあふれ、二人きりになれる場所を選んだ。てえてえの極致だろこれ・・・・

「私たちが今、楽しいって思ってることが色んな人に伝わって、また楽しさを伝えていく」

キャンプを愛する一人として、同時にアウトドアを仕事とする社会人としてこのセリフを考えると、なでしこが最強に理想的な大人であると思えてきませんか?あの若夫婦に口八丁で値段の張る高機能焚き火台を買わせることだってできたはずです。そうしなかった。JKトリオに最初からキャンプ道具一式を勧めることだってできたはずです。でもそうしなかった。彼女は、キャンプがやりたいという人の想いに対する最適解を常に提供するのです。だから店長も冗談交じりに「ウチの商品も売ってよ~」と言いつつ、なでしこが応対したお客さんがまた戻ってくることをわかっているのですね。

それでもやりたいこと、やるべきこと

キャンプ場計画がなくなって遺跡展示施設が代替案として決定したとしても、「つらいが仕方ない、仕事だからな」で身を引くのが大人なんでしょう。でも、それでも、やりたいことを貫いた。それがキャンプ場完成という価値になったワケですが・・・・

じゃあやっぱり大人ってなんなのよ!って話に戻ってきてしまうんですが、結局大人になっても自分ひとりで何かを成し遂げられる人は少ないとおもうんですよね。それどころか、大人だって常に誰かに助けられながら生きていて、その中で何か価値を生み出している。世界は誰かの仕事でできているのです。

先述の通り、野クルのまわりの大人はジェダイです。彼らジェダイの助けがあったからこそ、キャンプ場づくりに挑むことも、また再開することもできた。あおいちゃんも、鳥羽先生をまさしく人生の師としていることでしょう。鳥羽先生、あおいちゃんが大変な時期にあることを完全にわかっていましたからね。

なでしこはしまりんからキャンプの楽しさを伝えられ、そして今しまりんはなでしこに助けられた。楽しいって思える、価値ある事が伝わって、またその楽しさという価値を、いろんな人たちに助けられながら伝えていく。

社会人だって、大人だって、いつも自分ひとりでご立派に生きてるワケじゃない。目に見える形であれ、目に見えない形であれ、誰かの助けを受けているのです。そのなかでやりたいことややるべきことが価値を生み、誰かの助けとなっている。この映画はそんなふうに廻っている世界の、キャンプという一面に光を当てた社会人物語だと思いました。

 


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明るくなるまでさ

色々語り合おうよ

あたたかい火を囲んで

またきっと

夜明けに伸びる影

そろそろ歩き出そうか

透き通る空気 動き出す

それじゃ またね